プログラムの特徴

創造力を育てるプログラム

 子どもたちには生来、「驚嘆の感覚(sense of wonder)」と呼ばれる能力があり、身の周りの世界を知るための鋭敏なアンテナの役を担っています。子どもたちは五感「見る・触る・聞く・嗅ぐ・味わう」を総動員して、身の周りの世界を探索し、ものの在り方(仕組み)や有り様(いろかたち)を発見しています。このように、自然現象や動植物とのコミュニケーションから様々なインスピレーションをもらうことによって、子どもたちは思いがけない発想や飛躍を生み出す着眼点をみつけています。
 また同時に子どもたちは、感じたことを「描いてみたい」「つくってみたい」という強い表現欲求を持っています。子どもたち各々の小さな発見や着眼点を大切に認めることで、子どもたちは安心して自分の「思い」を表現し再確認します。このような創造(新たにつくりだすこと)の喜びが、子どもたちの自信と意欲を着実に培っていきます。
 かるがも教室ではこのような観点に立ち、子どもたち各々の発想を大切に育てながら、各々の「思い」を豊かに表現するための、創造力開発プログラムを組んでいます。

 

身近な生きものや植物との触れ合い

 材料や方法を知っていても、表したいと思う内容が乏しければ豊かな表現はできません。当教室では生きものや植物・砂や泥・光や風を多様に体験して、表現の源となるイメージを蓄えます。
 幼い頃の五感を駆使した知覚体験は、全ての知識の根幹となります。意外に思えますが、「数」「図形」の基本イメージも、生きものや植物の中に在るのです。

カタツムリとクモ(年長男児、27㎝×38㎝の白画用紙、クレパスと水彩)

カタツムリと遊んだ後の絵です。アジサイの葉の上でカタツムリが雨宿りしています。クモとカタツムリは友だちになりました。
ここはクモの家、クモの巣に水滴をたくさん描きました。

 

色とかたちを自在に操るフィジカルトレーニング

 かるがも教室に、緑色の絵の具はありません。3歳から、黄色と青色を混ぜて緑色をつくります。春のテーマの「はらぺこ青虫」の時には、蝶の幼虫を目前に見てから、アゲハの幼虫の黄緑色とクロアゲハの幼虫の緑色の色の違いをつくります。絵の具で混ぜることを知ると、子どもはクレパスでも色鉛筆でも自分から喜んで混色します。
 自分の混ぜ方によって、「マジックのように色が変わる」「さまざまな色が作りだせる」「色は無限にある」ことに誰もが驚き、色を作り出せることに大きな喜びと自信をもちます。この自信が「描きたい」意欲を育てます。
 円や楕円、四角や星型などの図形も、身体遊びで簡単に体得できます。図形を知ると、かたちを組み合わせて対象の特徴をつかむことが出来るようになり、絵を描く力・工作する力が自然と高まります。
 色もかたちもフィジカルな自然現象、かるがも教室では、色とかたちの面白さを体験的に学んでいきます。

虹とシャボン玉(年中女児、42cm×29.5㎝の白画用紙、クレパスと水彩)

巨大シャボン玉をつくって遊んだ後、絵を描きました。夕方の空に浮かぶ虹とシャボン玉を、山に住むウサギが「きれいだね~」とみています。画用紙を湿らせて、絵の具を滲ませました。

 

作品に心を通わせるお話作り教育

 子どもが「ごっこ遊び」の中で、例えばお母さんの役になって出来ごとを演じると、お母さんの気持ちがよくわかります。同じように、生きものに「なったつもり」で生きものや住処をつくってみると、生きものの気持ちや生きものからみた世界の様子がわかります。そして主人公を決めることによって、生きものの視点を借りることが容易になり、主人公の生きものからみた「意味」や「価値」が付加されます。さらに短いお話(ストーリー)をつけることによって、想像世界は「ごっこ遊び」のように活性化し、より鮮やかで生き生きとした造形表現を生み出すことができるのです。このようにかるがも教室では、例えばカエルと遊んだ後はカエルになったつもりで、カエルの家族や家や食べ物、遊び場や友だちや敵まで想像して、カエルの世界を作って(描いて)いきます。
 小学生クラスになると、造形作品についての短い物語を考えて文章で表し、小さな本を作ります。お話つくりクラス(卒業生小3以上)では長い物語を書き、指人形劇の脚本まで作ります。子どものイメージは色や形など五感からスタートしますが、長じるにしたがって「ことば」の力を借りて広がり深まるからです。「色や形」のイメージと「ことば」のイメージ、それぞれの長所を補いあって融合する、柔軟な感性を育てていきます。
 このように、かるがも教室では、造形活動に「お話つくり」を積極的に取り入れて自分以外の存在への共感や関心を育て、子どもの思いを反映した主人公のいる、生き生きとした世界を創り出す表現力を養っていきます。

ソラマメ船(年中男児、色画用紙)

ソラマメをむいて遊んだ後の工作です。ソラマメマンは、葉っぱの帆で走る船に乗っています。
船の冷蔵庫には葉っぱのジュース、巻物地図や航海日記、落ちた豆を助ける浮き輪もあります。鳥をやっつけるマメ鉄砲もあります。

 

主宰・指導責任者

志村裕子(1993年より、かるがも教室主宰)
東京藝術大学美術学部卒業及び大学院美術教育専攻修士修了
大妻女子大学大学児童学専攻修士修了・白百合女子大学大学院児童文学博士満期終了

著作

志村裕子 『孫の心をわしづかみにする遊び77』PHP研究所、2011年12月

 

論文

志村裕子 「絵本の絵における「遠近法」表現をどう読むか―理論的構築に向けた試論―」
      『白百合女子大学児童文化研究センター研究論文集16』、2013年
「子どもの絵に描かれた太陽はなぜ笑うか―物語るための仕掛けとしてのシンボル―」
      『美術教育研究第16号』美術教育研究会、2011年
「子どもの描く絵の中の物語についての質的考察―再現物語からフィクションへ―」
      『白百合女子大学児童文化研究センター研究論文集ⅩⅣ』、2010年
「子どもの描く絵を物語として読み解くための試論
      ―子どもの描く絵のテクストを物語として読む―」
      『保育学研究第48巻第1号』、日本保育学会、2010年 他